少し前のことになるが、ペナンからクアラルンプールまで鉄道で行ってみた。
ジョージタウンからフェリーでバタワースへ
ペナン州は島と本土(マレー半島)に分かれている。 本土という言葉は、地元の人がマレー半島を呼ぶときに使う「メインランド」の直訳だ。 ペナン島からの最寄り駅は、ペナン州の本土にあるバタワース駅である。
そこまでは、フェリーが便利だ。 乗船場所はジョージタウンのPangkalan Raja Tun Uda(ラジャ・トゥン・ウダ港) という船着き場だ。 Pengkalan(ペンカラン)はマレー語で港、Raja Tun Udaは、初代ペナン州知事のウダ氏のことで、名前に、Raja(王)Tun(名誉称号)がつけられている。 乗船はすべて徒歩または自転車、バイクで、車両の乗船は行っていない(かつては車も運んでいた)。 料金は大人が2リンギット(約70円)と格安。 現金不可でカード払いでチケットを買う。 Touch 'n Go(交通系ICカードで日本のSuicaのようなもの)があれば、チケット不要でワンタッチで改札を通過できる。 下船場所は、Pangkalan Sultan Abdul Halim(スルタン・アブドル・ハリム港)で、Sultan Abdul Halimはマレーシアの元国王の名前である。 フェリーは20分間隔で運航されており、所要時間はおよそ15分。
バタワース駅
フェリーから港へ降りる。

少し歩くと、Penang Sentralという複合バスターミナルが見えてくる。

その敷地内に、マレー鉄道(KTM)の主要駅のひとつ、バタワース駅がある。 駅舎は2010年代に建て替えられたもので、エスカレーターもある現代的な構造だ。
この駅は、タイ国境に近いパダンブサール方面や南のクアラルンプール方面など、長距離列車の発着点になっている。 この駅は一方向にだけ線路が伸びる終着駅の形だ。 鉄道の「起点」としても設定されており、線路のキロ数もここから始まる。 ホームにはKTMの高速列車「ETS(Electric Train Service)」だけでなく、通勤電車のKTM Komuterも停まる。 構内はそれほど広くはない。

ここからクアラルンプールに行くには高速列車のETSを使うが、チケットは事前にウェブサイトで購入する。 チケットは印刷しておくのが安心だが、スマホ画面に表示しても良い。 入場時には改札で、そのバーコードを読み取ってもらう。 日本ではSuicaをタッチするが、その代わりにバーコードリーダがあると思えばよい。 注意が必要なのは、改札が出発5分前に閉じられることで、その後はチケットを持っていても入れない(ETSの場合)。 つまり、出発時間ギリギリに行ったのでは乗車できないということだ。

偶然見かけた特別車両
駅のホームで目を引いたのが、濃いグリーンに金の手すりという、高級感あふれるクラシックな車両だった。 外側には「E&O」のロゴ。後で調べたところ、これは「イースタン&オリエンタル・エクスプレス(Eastern & Oriental Express)」という、シンガポール〜バンコク間を走る高級寝台列車だった。

一編成すべてがホテルのような内装になっており、料金も相応に高い。 写真のように展望デッキつきの車両がついている。 普段は見られない列車なので、かなり幸運だったといえる。
高速鉄道ETSに乗ってクアラルンプールへ
このバタワース駅からクアラルンプールのKL Sentral駅までは、ETSでおよそ4時間半、車窓から見える景色は、あぶらやし(アブラヤシ)のプランテーションがほとんどだ。 ずっと、左右に広がる濃い緑の葉が繰り返され、たまに川や小さな村の屋根が見える。 それが「いかにもマレーシアらしい」風景ともいえる。

この国では、アブラヤシが農業経済の重要な柱になっている。 アブラヤシから採れるのがパーム油であり、食用油や加工食品、化粧品など多くの用途に使われている。 マレーシアはインドネシアと並ぶ世界有数のパーム油生産国で、特に西海岸の低地にはアブラヤシの農園(プランテーション)が広がっている。
終点:KL Sentral駅
列車の終点は、クアラルンプールの交通の中心「KL Sentral(セントラル)」だ。 「KL」はクアラルンプール(Kuala Lumpur)のこと。 セントラルの綴りが「Sentral」なのはマレー語の表記だからである。 マレー語では発音通りに綴るので、英語の「central」が「sentral」になるのだ。 ちょうどローマ字のようなものだ。
この駅は、MRT、LRT、KTM Komuter、空港鉄道(KLIA Ekspres)、長距離列車、バスターミナルが一体となった巨大な交通ハブである。 商業施設やホテルも併設されており、まさにマレーシアの「玄関口」といった場所になっている。